すいか⇒かき

かき


カキはどうしてあれほど頑丈な殻を身にまとわなくてはならなかったのか?
というエッセイを、カキの殻をむくたびに思い出します。

陸上に目を向ければ、栗もまた渋皮・鬼皮そしてイガという過剰なまでの防御態勢を敷いていて、見るからに不信感の固まりだが、どうしてだろう。
ということが書かれておりました。
東海林さだお氏の食べ物エッセイでした。


冬のボーナスが出た直後の土曜日、近所の市場で殻つきのカキを、小さな箱ごと購入しました。
10個。
年中行事であります。
誰もほめてくれない自分への、ささやかなご褒美であります。

軍手をはめてカキをつかみ、平たい殻の右上隅にナイフをこじ入れて貝柱を切ります。
最初の2〜3個はぎこちない手つきですが、すぐにコツを思い出します。
そして、手際よく殻を開けられるようになったときには、10個が終わっています。
面白くなって、もっとたくさん殻を開けたい、と思っても10個です。

右手の拇指の付け根を殻で少し切りました。
これも年中行事です。
日頃は酒の銘柄にこだわらず、質素に生きていますが、この日だけは酒にもこだわります。

僅かに2千円ほどの贅沢ですが、来年の生ガキがいまから楽しみです。
毎日このような楽しみがほしいとは思わないけれど、毎年このような楽しみがかなう自分は幸せなのだと思うこの頃です。


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