てまえみそ⇒そばやのさけ

蕎麦屋の酒


静かな店で、手酌で酒をのみたいと思うことがある。
練馬に住んでいた時に一度だけ民芸調の店にフラリと入り、酒と板わさを頼んだら、菊正宗の正一合入りガラスビンに燗をつけて持ってこられて、興醒めだったが、一人で軽く一杯やるっていうのはいいもんです。

最近、しみじみとそう思います。
居酒屋っていうのは、騒々しくっていけない。
客の話し声が、ウワーンという音のうなりになっていて、圧迫感がある。
それに押しかぶせるように、歌謡曲か演歌が流れていて、酒がまずくなる。
それを我慢して飲むくらいなら、子供にまとわりつかれながら家で飲んでる方がよほどいい。

その点、鮨屋は客の話し声のうなりも、演歌もない店が多いが、また別の問題はある。
本当にくつろいで飲めるのか、という問題である。

鮨屋では、常連が大きな声で傍若無人な態度だから見ていて不愉快だ。
また、「おきまり」すなわち、店のほうで決めたセット物を頼むと気抜けするような気がするなる。
注文されてがっかりするようなものなら最初から品書きにのせなければいいのにね。
初めて入る鮨屋では、「松、竹、梅」などの盛り込みを食べなければその店の特徴が見えて来ないと思う。

松竹梅っていうのはいい区別だと思う。それに比べて、上中下というのは、高いものを頼むのがいい客だと言っているようで不愉快だ。
ぼくの好きなネタは、コハダ、アナゴ、タイ、ブリ、赤貝かハマグリ、タコ、イカ。それから、鉄火巻(これは直接苦手のマグロが舌に触らないし、トロを使うわけではないから嫌なねっとりした感じがないし、力が付きそうで好きだ)というラインナップになる。

特上鮨に入る事の多い「トロ」「ウニ」「イクラ」「エビ」は悪いけどちょっとどいてて、ということになる。
貧乏なんだとかグルメじゃないんだ、と言ってもらって結構。
いやなものは嫌。
回転鮨が一番あっているのだと思う。

事実、営業途中の昼飯として、週に一度は十皿位食べている。

ちょっと考えてもらいたいのは、トロの食べかた。
鮨飯と白飯のどちらにあうか。
うに、いくら、えびも同じ。
醤油をたっぷりつけて白飯で食べると、悪くない。
あなたは本当にトロと鮨飯が合うとおもいますか。

ぼくは18歳で家を離れるまで九州の田舎に住んでいたから、生肉の塊のようなマグロは食べたことも見たこともなかった。
もちろん栄養はあるだろうから、「好き嫌いを言ってはいけない」、というレベルではマグロも食べる。
しかし、カウンターに座る時、なるべくならマグロの塊の側には座りたくないなー、と思う。
生肉の塊のようで、どうも気持ち悪いのである。たいてい、そこはカウンターの一番奥で、常連客の席のはずである。
感覚的に旨そうに思えるアナゴやコハダのところに座るように心がけている。

蕎麦屋で酒を呑む話が、関東の鮨屋攻撃になってしまったが、子供の頃からの嗜好は変わりにくいということだ。


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