バナナ⇒なっとう
納豆の底力
納豆、オクラ、山芋、ナメコ、もずく… 粘り気のある食べ物は、おしなべて健康に良さそうな気がする。
必ずしも朝食とは限らないが、すがすがしい朝食の雰囲気を持つ食材である。
何事につけ、粘り強いことはいいことだし、あっけなく、もろく、ポキリと崩れるのは好ましいことではない。
切れるなんて、もってのほかである。
もし、粘り強いことがプラスに評価されないときは、「しつこい」という別の言葉に言い換えられるくらいだから、「粘り強さ」=「善」という信仰が日本人には染みついている。
納豆。
好きですね。
毎日納豆がないと朝食になりません、と宣言してかき混ぜ、必ずたべるほどではないけれど、スーパーの納豆コーナーに立てば、「○○産大豆100%使用とか、アメリカの△△さんの農場とか、丹波の黒豆とか、におわないとか糸引き抜群」とか。
見てて飽きませんね。
かき混ぜてしまえば、見た目ではほとんど区別できない分だけ、パッケージの言葉とデザインが激しく主義主張していて、実に楽しい。
「遺伝子を組替えたけど、それがどうした!」というパッケージは目立つだろうな。
いや、その前に、店においてもらえないか。
スーパーでパートしているAさんの話。
納豆は賞味期限ギリギリ〜多少過ぎちゃった、というくらいが一番旨いという人が結構多いらしいのです。
出荷されたばかりのが好きな人もいるでしょうが、こと、納豆に関しては、積極的に熟成モノを好む人がかなりの割合でいるらしい。 賞味期限ギリギリの納豆にパートさんが貼る「半額」のシール=食べ頃シールと見ているのだそうです。
半額になっているものと、本日入荷したものを両方買って同時に食べてみたら、違いってけっこうわかるもんですよ。
古いほうが、豆が堅い。最初は糸をひきにくい。気合を入れてかき混ぜるとねばりがぐんぐんと出てくる。味は、堅さほどには差はないように思えました。
納豆は、家族から少し分けてもらってご飯と一緒に食べるの一番旨い。
納豆を食べたいという子供のために、「よしよし、それではお父さんが力いっぱいかき混ぜて、極上の糸を引くようにしてあげよう」、ということで、混ぜ終えたら箸を垂直に立てて、細い一本の糸を切る。
こういうシーンが、東海林さだおさんの漫画にもよく出てくる。
誠心誠意家族に尽くした糸引き納豆をおいしいという子供。
「どれどれ、お父さんも一口」、という状況。
これが、旨い。
逆に、出張先のビジネスホテル。朝食バイキングで、食欲もないのに、食べなければ損だとばかりに、大皿に焼き魚、ハム、ウインナ−、ポテトコロッケ、などを盛り上げて、最後にご飯コーナーにある納豆を取った、出張疲れのお父さん(ぼくのことです)。
こういう納豆はまずいぞ。
こういうシーンも東海林さんの漫画にあった。
出張先でちょっとだけ飲みすぎた翌朝には、納豆に限らず、手間のかかるオカズはうっとおしい。
納豆は掻き回すのが面倒くさいし、糸をひくのも見苦しい。
焼き海苔でさえ、あの頑丈な包装を破る自信がない。
梅干さえも種がガリっとすると思うだけでぞっとする。
そういう朝は、シラスおろしをご飯に載せて、直接醤油をかけただけで軽く一膳をいただきたいと思う。
あれ、納豆賛歌になってない。
方向転換。納豆の底力を感じる一品(実は二品)を紹介します。
納豆蕎麦と納豆ごはん
乾麺をゆでる。
太目の蕎麦がいい。「そば」とか「ソバ」じゃなくて、ゴシック体で「蕎麦」というしかない太いやつ。
茹でている間に納豆をかき混ぜる。
醤油を多めに注いで、さらにかき混ぜる。
蕎麦を茹でる火加減に気を付けながら、さらにかき混ぜる。
茹で湯を適量納豆に加え、さらに混ぜる。
これで、つけ汁の完成です。
え、だしは入れずに醤油だけか、って?
そういうこと。
納豆にはつきもののネギは、蕎麦を口に入れるリズムの邪魔になるから、ぼくは入れない。
水洗いした蕎麦を盛り、醤油と蕎麦の茹で汁で調製した納豆汁にどっぷりとひたして食せば、至福。
蕎麦を食べ終えると、底には納豆が残っているが、捨ててはいけない。
もう一度諦めることなくかき混ぜると、醤油味の普通の糸引き納豆が出現します。
多少粘り気が弱いですが、ご飯粒とよくからみあってとってもおいしかったです。
蕎麦と大豆と米だけの清浄なランチで腹いっぱいになれます。
麦飯にして、胡麻塩でも振れば五穀(麦、米、蕎麦、胡麻、大豆)豊穣の祝い膳です(ここまでの手間はかけたことがないけどね)。
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