鍋のある食卓

第五話 

平成初期の練馬極狭社宅に独身寮時代の顔見知りが転勤で続々結集。
学生の寮だか、新婚所帯だか、なんだかわからないおんぼろ団地の物語。
書きたいことでもあるし、書きたくないような気もする。
その第二段。








柚子こしょうが左手前にポンっと載せられている。

冬は昼飯として、これを週にニ三回注文する。
知らないと損だと思うので、掲載。
都内の小諸そばで食す。

この写真は小諸そばのホームページから取ってきました。
僕が、このうどんのファンであるということ。
ここでとりあげることは同店にとってそれほどの不都合はなかろうという判断です。



牛しゃぶ⇒ビーフカレー

松坂牛の切り落としで満腹しゃぶしゃぶをしてしまいました。
ぼくの土鍋にとって、いい思いをしたベスト3に入ると思います。

今から約二十年前の出来事です。

ことの発端は、かの有名な松坂牛を出張先の食堂の牛丼で食べたこと。
貧乏を基本とする発想法ががクセになっているので、ブランド、ときくだけで反発したくなるのですが、安かったり、もらったりすると喜ぶのは、どういうことでしょうか。

吉野家より多少高いかな、というくらいの牛丼だったからぼくは最初から好意的でした。
お姉さんが絣の着物を着て、店には琴の有線放送が流れていて「松阪牛御膳」五千円也、というような店だったら最初から入りませんモノ。

ビニールクロスのあちこちにタバコの焼け焦げができていたり、テーブルそのものが、少し厨房側に傾いていたりという旅情もあり、「ああ、出張とはいえ、さっきは伊勢神宮を拝み、今はその参道脇の食堂で松坂牛を食しようとしている。」という、旅がらすならではののんびりした夕方。

牛丼は、脂身が目を細めたくなるほどなめらかでした。

醤油のせいなのかどうか、色はとても黒かった記憶があります。
「小間切れは牛丼やカレーライスによく使うけど、お土産屋にはないよ」、とのことでした。

地元の人が集まる市場の肉屋で松坂牛の小間切れ2sを購入。
いそいそと帰途につく。
100グラム単価300円くらいだったかな。もう少し高かったかもしれない。
コンニャクの袋に水を入れて凍らせたものを保冷材としていただき、出張かばんの中のタオルと衣類で包んで持ち帰ると、保冷材にはまだまだ氷が残っておりました。
小間切れを自宅用に買っていく人がけっこういるんだそうです。

深夜11時頃。
即ち肉の食い放題大会始まる。
こんなとき、電話一本で飲み仲間が調達できるのが社宅のよさでした。
かみさんは出産予定で九州に帰ってるけど、鍋と酒があれば、宴会だもんね。

小間切れだけど松阪牛。

探せば結構箸でつまんでしゃぶしゃぶ出来そうな肉がある。
さっと湯に通すと肉と脂の味が活性化する。
変なタレなんていらない。
醤油を一垂らし。それだけで、いい。

でもね、僕の場合はそこについつい、かぼすがあればかぼすしちゃうんです。
さらに、こういう肉系には、柚子こしょうがあいます。

それでも、2人で2sなんて喰える分けない。残った肉は、タマネギと炒め合わせ、土鍋にカレールーを入れたら上質の肉カレーが出来ました。土鍋に染みついた黄色いカレー色も土鍋の風格です。



柚子こしょう


柚子こしょうは、近所のスーパーでも買うことが出来ますし、「美味しんぼ」という漫画でも、最近取り上げられましたが、もっともっとメジャーになる香辛料だと思います。
この漫画では、柚子こしょうが餃子に合うということでした。
で、やってみました。
ハマりました。これは美味い。味の素の冷凍餃子みたいに、立派に旨い餃子じゃなくても、10個148円などの冷蔵モノの、「一応フライパンで焼いて食べてね」と書いてあるやつが、しょうゆと柚子こしょうで別の美味なるモノに変身します。

漫画は役に立つなあ。

大分県では、唐辛子のことを「こしょう」と呼びます。
では、あの胡椒のことは、
といいますと、「洋コショウ」と呼んでおりました。
柚子こしょうは、青唐辛子、塩、柚子の皮ですが、赤いのも最近店で見たことがあります。

東京都内に展開している「小諸そば」では、寒くなると豚うどんというものを売り出します。
トップの写真がそれです。
これには、大分県安心院産の柚子こしょうが一さじ添えられます。
写真のうどんは汁が関東風の黒い汁ですが、私がリサーチした限り、どの店も(2件だけど)そばつゆよりも色の薄いうどん汁を使っています。

豚うどん410円。ライスつきで500円。
これは病みつきになります。
外の寒さが立ち食いの旅情をいっそうかきたててくれます。



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